トゥルキスタン夜話

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2009.10.15 Thursday

二度目の奈落

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    「もう治りません。今の医学では無理なんです。」

    蛍光灯が眩い診察室で、容赦ない宣告がなされ、椅子ごと、底なし沼に落ちてゆく。苦しい、息ができない。
    人生で二度目の奈落。(全然別の病気だけれど)
    病気って常に不意打ちだ。
    予想もしなかったところから、病魔はやってきて、その時一番失いたくなかったものを失うことになる。

    でも17歳の時と違って私には分かることがある。
    この苦しみを、同じ苦しみを世の中の多くの人は経験しているのだ、ということ。
    ありふれたものなのだと言うこと。

    帰りにデパートに寄った。
    デパートのポイントカードが古くなっていたので(海外に出る前に作った紙のものwこんなの持っているの、日本中で私くらいだろう)プラスティックのに更新してもらおうとして、カウンターに行く。

    説明してくれた女性の言っていることが、全然理解できなかった。
    最初は「はい?」と何度か聞き返したが、同じ音量、同じ音域でしゃべるため、繰り返してもらっても分からない。
    日本語なのに、わからない。
    音量を絞った、ものすごく早い英語を聴いているような状態。
    よくショックで言葉が出ないというが、耳も聞こえなくなるのか。

    「…聴こえないんです」

    屈辱に喉が詰まって、その言葉が言えない。
    代わりにカウンターに涙がぼたっと落ちた。

    慌てるおねえさん。

    私も慌ててしまった。そりゃそうだろう、ポイント・カードの説明されて、何で泣くんだよ?!
    耐えがたい、変な空気が流れた。

    咄嗟におねえさんの背後にある「防犯ボール」と書かれた箱が、目についた。野球ボールくらいのオレンジ色の玉が3個ほど入っている。
    私はそれを指さし、「あのボールって、なんですか?」と質問してみた。

    動揺していたおねえさんは、ぎこちない笑顔で、ボールの説明を始めた。マニュアルにないことを聞かれたその時には、おねえさんはちょっと素になっていて(素になった時の声は何故か聞き取りやすい)、「悪い人がきたら・・・ボールを投げる。・・・すると犯人に色が付く」ということがなんとなくわかった。

    私は「御説明、ありがとうございます。じゃあ、えっと…検討しますね」と言残し、そそくさとカウンターを後にした。
    とりあえず強引に話題を変えて、席を立つことには成功したわけだ。

    結局、今、手もとには古い紙のデパートカードが残っている。
    穴のあくほどそれを見つめて、途方に暮れている……。

    22:57 | - | comments(4) | trackbacks(0) | - | - |

    コメント

    あることがきっかけで、このサイトに出会いました。

    そのことについては、まだ自分の中で整理ができない状況で、途方に暮れているところです。

    そのこととは関係なく、この文章を読ませていただき、どうしても何かコメントをしたくて書いています。

    でも何を書いてよいのやら、全く検討がつかないまま、pcに向かっているので、とりとめのない内容になっていて申し訳ありません。

    わたしはそういう状況になったことがない。
    どう言っていいのかわかりませんが、こういうコメントを極力入れたくないと思っている私にとって、とてもそのまま読んでいるだけではいられない想いに駆られ、こうやってどうでもいい事を書いてしまっています。

    きっと私みたいに、(よけいなお世話ですが)あなたのことを考え、少しでもその想いを私が請け合えたら、と思っている人がいると思います。

    ときどき、またここで文章を拝見できれば幸いです。
    2009/10/21 11:52 AM by luca
    この時期にいらっしゃるということは多分「あの件」かな、と憶測しますが、信じ切っていた、当たり前の光景が突然裏切られると、人は呆然としますよね。
    不治の病や致命傷というのも、それに似たものです。
    不幸はどれも「裏切り」に近い。

    10代の私はそういうものを背負う事態になると「誰もこの苦しみなんてわかりっこないんだ。世界が破滅して人類が滅亡すればいいのに!」という攻撃的な方向に思考が向かったものですが、今はむしろ「世の人々が当然のごとく抱え込んで耐えている密かな闇に自分が近づいた」ような気すらします。
    だからこそ、泣けるというか。

    私が抱え込んだこの闇に対し、共感する人が存在するかもしれないことは薄々感じていましたが(勿論、理解不能な人のほうが多いのでしょうけれど)、貴方はそれを愛の透ける綺麗な言葉で証明してくれました。そのおずおずとした優しさ、私にどうしてもなにか言葉を届けたいと無理をしてくださったことが、とても嬉しかったです。

    Lucaさんもどうぞ、「途方にくれた状態」をなんとか脱することができますように。
    あたたかいコメントありがとう。
    2009/10/22 9:47 PM by 蜜月
    管理者の承認待ちコメントです。
    2009/10/22 10:59 PM by -
    管理者の承認待ちコメントです。
    2009/10/23 1:24 AM by -

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